歩いて暮らせる函館へ お買い物電車とおでかけバス

  かつて、私たちが買い物をする場所といえば、日常の物は
  近所のスーパーか商店街で、たまに特別なものをとなれば、
  中心市街地にある百貨店にでも行くのが普通だった。

  それがクルマ社会の進展と共に、郊外の大型スーパーや、
  量販店までマイカーで出かけるスタイルが日常となって久しい。
  歩きで済むのはコンビニくらいのものだ。           無料電車に使用される函館けいりん「りんりん号」

  しかし、行き過ぎたクルマ社会の進行は、地域に様々な
  弊害をもたらした。中心市街地は空洞化し、人口の割に
  活気の無い街が増えた。
  マイカー無しでは生活することすら、ままならない。
  各地で高齢者を中心にこうした「買い物難民」と呼ばれる
  人たちが急増している。

  函館市でもこうした事態を受けて、今年5月から新たな取り    無料運行の表示に表情も思わずほころぶ?
  組みを始めた。そのうちの一つが週末の中心市街地へ向けて
  の、お買い物電車・バスの運行である。

  これは函館駅前(大門)地区、五稜郭公園前(本町)地区の
  2箇所に対し、周辺の各地域から買い物客の利便を図るのが
  目的で、中心市街地が複数ある函館の事情に配慮して、双方      無料電車の車内に掲示されている案内
  へは別々の日に、月2回ずつ運行する。

  これらは既存の定期便とは別に臨時便として設定され、
  電車は湯の川-函館どっく前、谷地頭間を合わせて5、6往復。
  バスは市内だけでなく、周辺市町村からのものもあり、
  それぞれ1、2往復ずつ運行している。

  驚くべきはその運賃で、臨時便を中心市街地まで(から)利用     レトロ電車530も無料電車で活躍 LRVとの出会いも
  する条件を満たせば、なんと無料となる。中でもバスの一部
  には、函館から30キロ以上も離れた南茅部(川汲)や、椴法華
  地区からの運行もあり、通常片道1010円~1630円もの運賃が
  無料になってしまうのだから利用価値は高い。これらの運賃
  は函館市から補助金を受けた地元商店街等が負担する。

  PR不足などの課題もあるが、5月の運行開始以来、電車・バス    バスには長距離のものも。片道千円以上が無料に!!
  ともに毎回約200人前後の利用があるようで、一定の効果が
  出ているようだ。

  更に10月からは別の取り組みも始まった。函館山の麓に
  広がる西部地区での「おでかけバス」運行実験である。

  教会群など函館を代表する観光スポットが目白押しのこの
  地域だが、急峻な坂道が随所にあり、住民(特に高齢者)に
  とっては日常の買い物や、既存の公共交通へのアクセスも
  容易ではない。
  そこで、エレベーター代わりに地域内の坂道を昇り降りしな        函館らしい港の坂道を行く「おでかけバス」
  がら周回する、バスの実験が行われることになった。

  26人乗りのマイクロバスを使い、市電に接続する十字街電停
  から函館山の裏手に近い船見町まで、一帯の坂道を縫うよう
  にジグザグに走る。運賃は100円均一だが、既存の公共交通
  との連携も重視され、特定の箇所で市電や路線バスから乗り
  継ぐと、わずか40円となる。また、別の100円バスとの共通
  1日乗車券もある。

  面白いのは車内放送に地元小学生の声を採用していることで、        市電車内に掲示された「おでかけバス」の案内
  停留所案内のほか、乗継案内、坂の名前の由来などの放送も
  流れる。自分の子どもの声を聞こうと、わざわざ試乗する
  家族連れもいるほどで、「自分たちの公共交通」という住民
  意識の醸成にも一役買っている。

  運行開始以来、住民はもとより、観光客の利用もあり、まず
  は好評のようだ。

  比較的良好なスタートをきった買い物電車・お出かけバスで
  あるが、現時点で両者とも、この年末・年始までの運行予定
  であり、今後も運行が続くのかはまだ、決まっていない。

  道内はもちろん、全国的にも珍しい数々の取り組みが単に、
  財政や効率の理由だけで取りやめられることなく、「歩きと
  自転車・公共交通で暮らせる函館」を目指して、着実な歩み
  を続けていってほしいと市民の一人として、切に願いたい。

  函館商工会議所ホームページ
  http://www.hakodate.cci.or.jp/
  (ニュースヘッドライン欄の右下の矢印からスクロール 
  「買い物向け無料バス・市電の運行がスタート」の欄を参考)

  函館市 西部地区おでかけバスのホームページ
  http://www.city.hakodate.hokkaido.jp/toshiken/machidukuri/bus/



※ 補足情報

○ 買い物電車は毎月第二、第四日曜に函館駅前(大門)方面へ、第一、第三土曜は五稜郭公園(本町)方面への運行。1月2日、3日も初売り需要のため、両地域を対象に運行予定。駅前方面への場合は「大門号」、五稜郭方面への場合は「五稜郭号」の名称が付く。

大門号は湯の川-谷地頭、函館どっく前間をそれぞれ3往復ずつ、計6往復、五稜郭号の場合はどっく前行が2往復となり、計5往復の運行。いずれも定期便の振り替えではなく、増発の臨時電車としての運行。大門号では函館駅前・松風町での乗降が、五稜郭号の場合は五稜郭公園前・中央病院前で乗降すると、利用距離に関係なく無料となる。なお、上記以外の電停同士を利用した場合、通常料金となるので注意が必要。なお、一日乗車券等でも利用できる。           大門号に使用された都電色1006号

谷地頭行には716号(函館けいりん広告車)を限定で使用。
また、どっく前行にはレトロ車両530号、
または1006号東京都電色復元車(右写真)が限定で
使用されるので、市電ファンの記念乗車にも好適。

  
○ 買い物バスは富川会館前、七飯、南茅部支所、椴法華から、それぞれ1往復。昭和営業所、赤川、日吉営業所からは2往復の運行。運行日は市電と同一。各停留所に停車するが、往路は途中での下車が、復路は途中からの乗車はできないので、注意が必要。

タグ:市電 バス

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