ここまできた ! ! 新幹線新函館駅周辺の現状~2009秋~

  本州から遠く海を隔てた北海道。
  ほんの一昔前までは、ここに新幹線がやってくることなど、
  想像すらできなかった。

  そこに本州へとつなぐ青函トンネルができ、日常的に直通
  列車が走るようになって既に20余年。その間、激しく移り
  変わる時代の中を八戸、そして来年12月開業予定の新青森へと、      現在の渡島大野駅 新函館駅建設地の看板も
  まるで樹木が成長するかの如く伸び続けた新幹線。
  2005年には2015年度の開業を目標に、新函館までの区間が
  着工されるに至った。
  ついに北海道までの新幹線の到達が現実のものとなったのだ。

  それでも事業仕分けなど、ただでさえ、世間で公共工事削減
  の嵐が吹き荒れる昨今。多くの人は未だに新幹線の接近を
  現実のものとして、感じることができないのではないだろうか。

  それでも各所で工事の槌音は響き始めているという。
  新幹線の当面の終着駅となる、新函館駅(渡島大野駅)の予定地
  周辺を、ある秋の一日に訪ねた。

  現函館駅から北へ約18km。ローカル列車で30分余り。          
  穏やかな秋の日差しが降り注ぐ、渡島大野駅のホームに降り立つ。        のどかな現在の渡島大野駅ホーム

  大沼の紅葉見物で賑わう車内とは対照的に、降りたのは私と
  もう一人の地元客だけ。現在の大野駅は毎日、こうした地元
  利用者と、通学生らの利用があるだけの、のどかで優しい時間
  が流れている。そこから新幹線の気配を感じ取ることはまだ、
  難しい。

  もちろん駅舎は無人で、駅前もひっそりとしたものだったが、
  「北の大地に新幹線を 新函館(仮称)駅建設地」と書かれた
  巨大な広告塔が目を引く。やはりここは新幹線予定地なので
  ある。

  駅横の空き地へ歩を進めると、何も無いその中心に赤い標識が       大野駅脇に立つ新幹線の工事標識
  あった。これこそが新幹線の工事標識(正式には中心線表示杭
  という)。正にこの場所を中心に線路が引かれるのだ。

  東京駅から823.8kmの地点。これは東海道・山陽新幹線だと、
  東京-三原(広島県)の距離にほぼ、等しい。開業時にはここから、
  時速320kmの新幹線が東京まで約4時間で結ぶという。

  ちなみに現在のJR運賃・料金にあてはめると、17,740円となる
  計算。当然、開業時には割引きっぷもできるのだろうが、現時点
  でも航空機より安そうなのが、何だか嬉しい。

  駅周辺では新はこだての名を冠した動物病院や、海峡ラーメンの
  店など、早くも開業を先取りしたかのような動きも。線路を跨ぐ
  歩道橋に上ると、ゆったりと雲が流れる秋空の下に、今はまだ、     大野駅全景 奥が札幌方 左端が新幹線予定地
  眠っているかのような未来のターミナル駅の全景を見渡せた。

  ちょうど、函館行のスーパー北斗が通過していく。開業時、この
  場所には新幹線と在来線が、対面で乗り換えられるホームが造ら   
  れる。現在のところ、札幌行の特急全列車が停車し、現函館駅     
  までは新設のリレー列車も連絡する予定で、先頃、函館の経済界     現在の新幹線八戸駅 やがて大野駅もこうなる?
  がその列車にJRが開発中のモータ・アシスト式ハイブリッド車両
  を採用するよう、要望すると伝えられた。従来の車両に比べて
  加速が格段に良くなるため、新函館-現函館駅間を16分程度で
  結べるという。

  これとは別に、JRもスーパー北斗に同方式の新車両の導入を検討
  していて、こちらは新函館から札幌まで約2時間半で結ぶことを
  目指している(始発は引き続き現函館駅の予定)。新幹線の開業は、    新函館駅のアクセスに使用が検討されているハイブリッド車両の試験車
  青函トンネルや大野駅のみならず、道内の鉄道風景全体をも、大
  きく変貌させるものとなりそうだ。

  函館線に沿って、広大な田園風景の中をひたすら歩く。今日は
  穏やかな天候で、各所ですすきの穂が揺れ、トンボが飛んでいく。
  いつしか心まで広々と開放感で、いっぱいになっていた。         函館方を望む 奥が七飯町 新幹線は右端を走り東京へ

  1時間ほど歩くと、その風景の中に忽然と大規模な工事現場が
  現れた。大型のくい打ち機だけで2台。そこから道を挟んで反対
  側には、既に造成された大きな台地が視界を覆う。ここは新幹線
  の函館総合車両基地となる場所である。

  函館線と新幹線の本線路の間に広がる扇状の土地に、新幹線の
  車庫、検修施設、工場などからなる敷地面積36万平方メートル、
  東京ドーム約8個分の広さにも相当する巨大な車両基地が造られる。    土台造りが進む新幹線車両基地の工事現場

  将来、札幌まで新幹線が延伸された場合でも、JR北海道所属の
  すべての新幹線車両が、ここで検査を受けることになる予定で、
  北海道における新幹線の総本山といえる。文字通り、扇の要の
  施設だ。

  今はまだ、雑然とした工事現場でしかないが、造成地の遥か向こう      車両基地工事現場に浮かぶ函館山
  に函館山だけがぼんやりと浮かぶ、象徴的な光景が見て取れた。
  やがて、この場所で函館山をバックに、新幹線がずらりと居並ぶ姿
  を見ることができるのだろうか。

  工事現場を通り抜けると、間もなく七飯町。瀟洒な家並みが広がり、
  あと数年もすれば、一帯の風景も、地域の姿も一変していること
  だろう。新幹線は確かに私たちのところに近づき始めているのを
  実感できた一日だった。

  現地は起伏も少なく、歩きやすいので、皆様もぜひ一度、更に
  工事が本格化する前に、「新幹線を感じる一日散歩」を体験して
  いただきたい。


  北海道新幹線2015年新函館開業ウェブサイト
  http://www.shinkansen-hakodate.com/kikou

  北斗市建設部新幹線対策課 ホームページ
  http://www.city.hokuto.hokkaido.jp/shinkansen/toppage/toppage.htm


この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。