無料電車がいざなう心温まる初詣

  皆様はどのような新年を迎えられただろうか。

  新年最初の新聞の一面に躍った「札幌市電延伸へ」の見出し
  には驚かされた。果たして今年は環境型交通への変革が本格
  化する年になるのだろうか。

  函館でも水面下で延伸計画が検討されているのだが、その話
  はまたの機会として、今回はその新聞から数時間前の元日未
  明の話である。

  札幌周辺では例年、大晦日から元日にかけて北海道神宮向け
  のJR深夜電車やバスが運行されているが、函館では数年前か     車内に掲示された初詣電車の案内
  ら初詣向けの市電の深夜運行が行われている。

  湯の川や谷地頭など、函館市電の終点は温泉が近いことで知
  られているが、実は神社も各終点の目の前にあり、もともと
  初詣には利便がよい位置にある。

  大晦日の深夜から元日未明にかけ、全線に渡って4~6往復前
  後運行され、これら沿線の神社へ向かう初詣客はもちろん、
  友人宅訪問など、初詣以外の目的でも自由に利用できる。

  驚くべきことに料金はすべて無料で、あらかじめ運行に協賛
  する企業を募り、その広告料で運行経費を賄うという全国で      協賛広告の例 「市電の運行を応援します」の文字も
  も珍しい方式だ。12月初めから一部電車の窓や、車内を中心
  に配布される初詣電車用の時刻表に協賛企業の広告が出され
  ている。これは全国各地で参考にしてもらいたいものだ。

  過ぎ行く2009年という、わずかな時間を惜しむかのように降
  りしきる雪の中、函館駅前から私も初詣電車に乗った。

  あいにくの天気のせいか、乗客はやや少なめ。それでも車内
  は無事、新しい年を迎えられる安堵感からなのか、落ち着い     年が明けると片方はこのような表示に
  た雰囲気だ。

  十字街で一旦下車すると~ゴーン~ と、
         
                どこからか除夜の鐘の音が。

  そしてどこからか ~チンチンジャンジャン~ とリズミカル
  な音色も混ざる。これはハリストス正教会の鐘の音である。
  早くから西洋文化が入った函館西部地区は除夜の鐘まで和洋
  折衷で賑やかだ。これは「一聴の価値」がある。

  どっく前行に乗り換えると、暴風雪の中、電車は静まりかえ          電車は静まり返った雪の街を行く
  った雪の街を黙々と走る。終点で下車すると、目の前には知
  る人ぞ知る初詣スポット、厳島神社があった。

  本当に地元の人だけが訪れるような小さな神社。参拝するの
  に待ち時間も一切かからない。それでいて寂れているわけで
  もなく、どこか温かい。

  しかも境内ではあずき湯や、七福神が描かれた特製福入袋も      知られざる初詣スポット厳島神社 どっく前電停すぐそば
  配布されている。今年は激しい風雪で中止となってしまった
  ようだが、枕に入れると良い初夢が見られるお札?を参拝者が
  取り合う催しもあった。小さいのに充実した内容で、本当に
  ここまで来てよかったと思える貴重な場所である。

  さらに付近の商店街に足を向けると、地元の有志による「笑
  福七福神祭」という催しも行われている。 これは近くの造船
  所から市民が扮する七福神が乗り込んだ宝船を街に出 し、他      暴風雪の中、2010年の初電車が力強く走る
  の参加者と共に付近を練り歩くというもの。主催者曰く、
  「世界一(一年で最も)早く行われるお祭り」だそうで、次第
  に定着しつつあるようだ。

  ここも暴風雪のため、予定していた行事のほとんどが中止と
  なってしまったのだが、それでも訪れた私は主催者側から家
  族分の大入り袋と福餅をいただいてしまった。今年は良い年
  になるかもしれない。

  幸せな時間は瞬く間に過ぎ、もう最終運行の時間に。再び雪        厳島神社と笑福七福神祭双方で頂いた大入袋 大切にしたいもの
  の夜を無料電車で函館駅へ戻ると、ちょうど夜行列車はまな
  すが白い世界の向こうへと旅立っていくのが見てとれた。今
  度は無料電車から連続で初夢にも似た旅に出てみたいものだ
  と、一人静かに今年の一歩を踏み出した。

  皆様もぜひ一度、函館のお得で幸せな年越しを経験してほし
  い。もしかしたら、一生離れないような福がそこで得られる
  かもしれない。
タグ:函館 市電

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